USPTO、「ミーンズ・プラス・ファンクション」及び「ステップ・プラス・ファンクション」クレームの審査に関する覚書を公表(2024年3月18日公表)
米国特許商標庁(USPTO)は、2024年3月18日付で、米国特許法112条(f)(「ミーンズ・プラス・ファンクション(MPF)」又は「ステップ・プラス・ファンクション(SPF)」の形式で記載された、機能的クレームに関する規定)の下で、クレームの限定を適切に解釈し、この解釈を明確に記録に残すことを審査官に周知するための覚書(メモランダム)を公表した。この覚書は、USPTO職員の実務の変更を提示するものではない。
覚書には、以下の内容が含まれている:
・米国特許法112条(f)が適用されたクレーム(「MPFクレーム」又は「SPFクレーム」)は、特定の機能を実行するための手段(「means」)又はステップ(「step」)で表現され、明細書中に記載された対応する「構造、材料、又は行為」(以下、これらを「構造等」という)と、その均等物とをカバーすると解釈される。このため、出願人は、クレーム自体に、機能を実行するための手段又はステップを具体的に特定することを回避して、明細書中の説明にクレーム範囲を依拠することができる。しかし、この法令解釈の下では、審査官が、クレームを最も広く合理的に解釈する場合、米国特許法112条(f)の限定は、機能全体を実行するとして明細書に記載された構造等と、その均等物とに限定されなければならない。その結果、米国特許法112条(f)が適用されたクレームは、そうでないクレームより権利範囲が狭く解釈されることがある。
・SPFクレームに関して、「step for」という文言には、米国特許法112条(f)が適用されると推定されるが、「step」のみ、又は「steps of」という文言には適用されない傾向がある。現在分詞(「-ing」)で終わる動詞で説明される行為を伴うステップは、米国特許法112条(f)の適用を回避できる。審査官は、製品クレームとプロセスクレームの両方に構造要素が現れる可能性がある点に留意することが重要である。
・クレームにおいて、機能を実行するために十分明確な構造等を記載することなく、その機能のみを記載する限定は、米国特許法112条(f)の下で解釈される。クレームに「means」又は「step」という文言が使用され、且つ機能的な文言が含まれる場合、米国特許法112条(f)が適用されると推定されるが、この推定は、クレームに機能を実行するために十分明確な構造等が記載されていれば覆される。一方、「means」又は「step」という文言が使用されないクレームは、米国特許法112条(f)が適用されないと推定されるが、この推定は、クレームに「means」又は「step」の代用語(「generic placeholder」)が使用されるとともに、機能的な文言が含まれ、機能を実行するために十分明確な構造等が記載されていなければ覆される。審査官は、これらの推定がクレームの文言によって覆されているかどうかを常に検討すべきである。
・「means」の代用として使用される一般的な代用語に関する絶対的な承認リストは存在しないため、審査官は、明細書の記載及び当該技術分野で通常認められている意味に照らして用語を慎重に判断する必要がある。米国特許審査便覧(MPEP)2181は、「code」、「application」、「program」、「user interface code」を含む、一般的に問題となる用語の例を提供し、これらの用語に関し、コードやアプリケーションによって実行される機能と組み合わせて使用されるときに構造を暗示するものとして理解される場合には、代用語ではないと明らかにした。一方、ある状況では、「mechanism for」、「module for」、「device for」、「unit for」、「component for」、「element for」、「member for」、「apparatus for」、「machine for」、「system for」は、米国特許法112条(f)が適用される代用語になり得ると判断されている。
・明確な審査記録を確立するという庁目標から、審査官が米国特許法112条(f)の限定事項の解釈を書面にて確立することは重要である。これにより、出願人等は、審査官のクレーム解釈を知ることができる。さらに、このクレーム解釈に基づいて、審査官がどのように先行技術を検索したかが出願人等に通知される。このため、出願人が異なるクレーム解釈を望んでいる場合、審査の早期段階で、解釈の相違を明確にすることができ、審査官は、異なるクレーム解釈に基づき先行技術を再検討することができる。
・クレームが米国特許法112条(f)の限定を含むと判断されると、サポートとなる開示の妥当性が、米国特許法112条(a)及び(b)の下で評価され、クレームの範囲の境界が明確に定義されているか、適切な説明が提供されているか、クレームが完全に有効であるかどうかが判断される。米国特許法112条(f)の限定の明確性要件を満たすためには、クレームに記載された機能全体がどの構造により実行されるのかを当業者が理解できるように、明細書に開示されていなければならない。クレームに記載された機能全体を実行するための構造が明細書に開示されていない場合、クレームは、米国特許法112条(b)の要件を満たさず、不明確と判断されるべきである。また、明細書に開示された構成は、クレームに記載された機能と明確に関連しなければならない。
・コンピュータに実行される、米国特許法112条(f)のクレームの限定に関しては、クレームされた特定のコンピュータ機能を実行するためのアルゴリズムが明細書に開示されていなければならない。特定のコンピュータ実装機能を実行するための手段を記載し、その機能を実行するために設計された構造として汎用コンピュータを開示しているだけの場合、クレームは、第112条(b)の要件を満たさず、不明確と判断される。
・クレームされた機能全体を実行する構造等を明細書が開示しておらず、米国特許法112条(b)に基づき不明確と判断された米国特許法112条(f)のクレーム限定は、米国特許法112条(a)に基づく記述要件、実施可能要件を満たしていない可能性もある。
【情報源】
米国特許商標庁(USPTO)HP:
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